こんにちは、ヨウイチです!
3月も後半に入ってくると気温も徐々に上がり、いよいよ野菜作りの本格的なスタート。
この時期に夏野菜の育苗を始める方もいらっしゃるのではないでしょうか?
しかし3月4月は夏野菜にとってはまだまだ寒く、発芽・成長には加温設備は必須。
そこで今回は、自然農ではお馴染みの加温設備『踏込み温床』の実際の作り方や気を付ける点をご紹介します!
こんなひとにおすすめ!
- 踏込み温床の作り方をイチから知りたい人
- 電気を使わず自然の力で育苗してみたい人
- 踏込み温床をやってみたけどうまくいかなかった人
踏込み温床は資材をすべて身近な自然から調達できる『エコな加温設備』。自然農に興味を持たれてる方にはとてもおすすめの設備です。
自然の恵みを受けて育てる苗にはとても愛着がわきます。ぜひこの記事を最後までお読みになって、踏込み温床にチャレンジしてただきたいと思います!
ちなみに『踏込み』とは作り方を表しており『踏み込んで作る温床』という意味ですよ。私はしばらくこのことに気づきませんでした(笑)
それではどうぞ!
※注意~ご紹介する温床について、作成は比較的簡単なものですが作成後の管理について毎朝晩畑に行く必要があるものとなりますのであらかじめお知らせさせていただきます。どうぞ引き続き読み進めていただければ幸いです。
踏込み温床とは?その原理
『踏み込み温床』とは
『有機物(落葉や枯れ草)が分解されるときに出る熱を利用する育苗方法』のことです。
有機物の分解には微生物が関わっており、分解する際に熱を放出します(発酵熱)。
踏込み温床はこの熱を利用しています。
冬に堆肥の山から湯気が出てるのを見たことありませんか?
あれが発酵熱です。
踏込み温床の作り方
ここでは私が過去にやってみた方法をご紹介します。参考にしたのは川口由一さんの温床づくりで、穴を掘り稲藁などを発酵させるやり方です。
・簡易温床づくり(川口由一氏、平成30年の記録) – 自然農・いのちのことわり 田畑における具体的問題と解決 (jimdofree.com)
最初に考えること
まずは温床の大きさを決めましょう。
温床の大きさ決めるために考えなくてはいけないことは3つあります。
育苗期間の長さ
温床はその体積が大きければ大きいほど長期間加温することができます。面積が大きく深さが深い温床ほど有機物を多く踏み込めることから長期間発熱します。
踏込み温床は有機物というガソリンを入れるガソリンタンクと考えればわかりやすいように思います。
育てたい苗の数
面積が大きければ大きいほど同時に多くの苗を育てることができます。ご自身の育てたい数の苗が多ければ面積を大きくする必要がありますし、育てたい苗が少しなら温床の面積も小さくて済みます。
温床に使える場所
畑の一角を数カ月(だいたい3月~5月)使いますので、畑で温床用に使える場所があるかも大切です。土の質は問題となりませんが日当たりが良いことは必須です。
私の場合
ちなみに私の温床は1m×2m×0.5mで、この大きさではLサイズの*花かごを5個並べることができ、育苗ポットなら同時に最大約100個の苗を育てられる規模になります。
*花かごとは・・花かご 安全興業 トレー 【通販モノタロウ】 (monotaro.com)
稼働期間は3月下旬から5月下旬の2カ月で、この期間は問題なく加温が継続する大きさです。
用意するもの
さて温床の大きさが決まればその大きさに合った投入資材を用意します。順番にご紹介しましょう。
落葉や刈草
乾燥していなくても良いですがボロボロに堆肥化しているものは温度が上がらないので避けましょう。※微生物が分解できるものが残っていないため
2024年は落葉~30kg用米袋14袋、枯れ草~5抱えを使用しました。
米ぬか・油かす
分解を促進するために入れます。2024年は米袋1/3(約10kg)を使用しました。
※鶏糞を使う方法もありますが私は使っていません。≪下記の補足Q&A参照≫
水
水道水でもかまいませんが大量に必要ですので雨水をためて使っています。雨水は微生物を弱らせる塩素が無いのもいい点です。
2024年は約17リットル使いました。
保温資材
保温・防虫と雨除けのためにビニールトンネルを使います。
夜間冷えたり雨に降られたりすると一旦温まった温床が冷えてしまうからです。防虫ネットは苗を虫から守ります。
道具
温床の形態によって違いはありますが、スコップや鍬、電動ドライバーなどの工作器具を使います。一般的な農業用具やDIY器具で足ります。
作り方
温床枠の準備
穴を掘り、壁面が崩れてこないように廃材で囲います。
ビスなどで固定はしていませんが細い竹を打ち込み、ズレ防止としています。
温床枠の板もそのうち分解されますから、あまり労力やお金をかけないものとしました。
(大きさは縦2m×横1m×深さ50cm)
資材の投入
落葉、米ぬか、油かすを用意しました。
基材は落葉の他に稲藁を使うこともあります。有機物であればOKですが、あまり水分が多すぎるものは腐敗して温度が上がりませんのでご注意ください。
分解促進には米ぬかの他にも鶏糞や牛糞、野菜くずを使うやり方もあります。※野菜くずは表面についている微生物を補うためです。
落葉だけでは足りないので、畑の雑草も使います。
おすすめはイネ科の雑草です。繊維が固いので分解に時間がかかりますが、そのぶん長期間の温度維持に役立つようです。
温床に使うためにわざと雑草を刈り取らずに残していました。 仕込み時期の3月にはちょうど良い乾燥具合になっています。
分解の早い落葉と分解の遅いイネ科の雑草の2種類を使うことで、温床の温度をはじめから終わりまで長期間キープできてるのかなと考えています。
ここからはいよいよ「踏込み」です。用意した資材を順番に投入し水をかけ、踏込みしていきます。
投入の順番は、「落葉→米ぬか→水→踏込み」。これを枠の8割が埋まるまで繰り返します。断面を見ると「ミルフィーユ」のような地層にわかれるイメージです。
今回は思い付きで畑の菜花を投入してみました。水分補給と微生物補給を兼ねています。
※踏込む際のコツ①~米ぬかを馴染ませた後に水かける
落葉→米ぬか投入のあとすぐに水をかけると米ぬかがダマになり腐敗の原因になります。※温度も上がりにくくなります。
水をかける前に落葉と米ぬかをよく掻き混ぜ、米ぬかを満遍なく行きわたらせましょう。
足で掻き混ぜると楽ですよ。ダマになると長靴も汚れますので先混ぜは一石二鳥!
水をかけた後も同じように掻き混ぜ、水を全体に行きわたらせます。
水は思ったより多量に必要です。目安は落葉を握ってみて水がポタポタ垂れるくらいと考えましょう。
※踏込む際のコツ②~地層はその都度完成させる、最後に一気に水はNG!
この「落葉→米ぬか→水」のサイクルは1地層ごとに完成させましょう。後から一気に水を馴染ませることはできませんので、大変ですが1段ずつの踏込みです。
踏込みは汗をかくくらい体が温まります。野菜作りシーズンの準備運動にちょうど良いです(笑)
踏込みを繰り返すこと約10回!ようやく枠の8割以上が埋まりました。
水にぬれた落葉は踏めば踏むほど締まっていき体積が小さくなりますので、思ったより多く落葉が必要です。
最後に表面を平らにするために土を投入します。
この土に種を直播し育苗するスタイルもありますので、その際は育苗用の土を使ったほうが良いです。
私はここにセルトレイを載せて使うので土質はどんなものでも構いません。乾燥防止に土の上にもみ殻をまいても良いでしょう。
雨除けと保温
雨除けと夜間の温度維持にビニールトンネルを設置します。
私の場合「防虫ネット→穴あきビニール→不織布→雨除け用ビニール」の4枚重ねです。
3月上旬などに育苗を始める方は、夜間気温が0℃近くになることもありますので、さらに古毛布なども使う必要も出てきます。
私は3月下旬からの育苗なので毛布は必要なさそうです。
以上で踏込み温床の仕込みは完成です!が、注意点があります!
!温床完成後の最大の注意点!
ようやく踏込み温床が完成しました。
しかしこのタイプの温床では「温度調節でビニールトンネルの開閉をすること」が大切な条件です。朝晩の温度管理(早朝にトンネルを開け、夕方にトンネルを閉める)が必須となります。
完全防備状態のビニールトンネルでは昼は温度が上がり苗には暑すぎますので、毎日様子を確認する必要があります。
ここが最大の難関かもしれません。仕事も生活もある中で毎日畑に行ける人は限られてくるかも、、でも温床を管理できる生活環境に身を置けることこそが幸せなのかもしれません。
仕込み後から育苗開始までの様子
ここからは仕込み後の様子をご紹介します。
こちらが仕込み直後の地温。
地下約15cmの温度は約11℃。
翌朝には温度が上がりはじめ約50℃まで上昇。
2日後にはピークの54℃に。
毎年同じような温度変化で、約1週間かけて徐々に温度が低くなり、最終的には30℃前後に落ち着きます。
このころを目安に夏野菜の種まきをします。
つまり温床の仕込みは種まき予定日の1週間前に行うと良いでしょう。
最高温度は驚きの50℃越え!温床にそっと手を入れるとホカホカで気持ちいい!不思議だし面白いですよね~
夏野菜の育苗には朝晩の冷えこみが心配ですが、温床があればひとまず安心です。
ぜひ導入をおすすめします!
補足Q&A
Q.仕込んで10日経ちますが温度が上がりません。
A.水の量が適切でない場合が多いです。水不足もしくは水が過剰と考えられます。表土を取り除き有機物の含水状況を確認したほうが良いです。
有機物がカサカサに乾燥しているのは水不足。再度水を加えて掻き混ぜてみましょう。全部は大変なので出来るところまでやってみるだけで温度が上がることがよくあります。
水が過剰な場合ですが、雨水が侵入してきていることもあります。これではせっかく始まった発熱に文字通り水を差してしまうことに。ビニールトンネルなどで覆いをつけるのが良いと思います。
Q.最初は順調でしたが1カ月くらい経って急に温度が下がりました。
A.水分不足です。
分解が進んでいくと自然に水分が不足してきます。日光で乾燥するというのもあると思いますが一番の原因は微生物の活動によるものです。
というのも分解の主役である微生物たちは水を使って分解を進めていますので、活動が盛んになり発熱が続いているということは水も使っているということです。
水分を少し足して掻き混ぜてやると再び温度上昇してきますのでご安心ください。
Q.ナメクジなどの被害はありますか?
A.あります。
特にウリ科の野菜育苗には温床内にナメクジが侵入してきます。侵入したナメクジは昼間はセルトレイの下に隠れているのですが夜間や早朝に出てきて新芽を食べることがあります。
朝晩ビニールハウスを開け閉めする際にセルトレイの裏側を確認して排除しましょう。
ネズミの被害もあると聞いたことがあります。こちらは温床内でサツマイモの芽出しする場合ですが、全体を防虫ネットで覆う方法があるようです。
Q.使い終わった温床は次の年にはどうしますか?
A.分解した落ち葉は来年の育苗用培養土に混ぜて使います。
仕込んで1年たった落葉は良く分解して腐葉土になっています。これを次の年の育苗に使うことができます。
Q.鶏糞を使わない理由はなんですか?
A.有害ガスが発生したり、使用後の温床を培養土に利用しにくくなるからです。
鶏糞を使った温床は高温になり温床としては便利なようですが鶏糞の窒素分が多いため分解時に野菜にとって有害なガスが出るようです。このガスで苗がダメになることもあるそうです。
また出来上がった腐葉土にも多くの窒素成分が残るため自然農の育苗には向かないと考えます。※自然農の育苗ではなるべく根力(ねぢから)のある苗を育てたいので培養土に強い肥料は入れないようにしています。
ただ窒素の割合の計算ができるようであれば高温になる鶏糞を使ってもいいとは思いますが、計量が手間ですし米ぬかのみで十分温度も上がりますので、私は米ぬかを使っています。
終わりに
踏込み温床の作り方について一通り説明させていただきましたがいかがでしたでしょうか。
実際に踏込み温床を導入するにあたっては様々なハードルがあります。
踏み込む大量の有機物をどうやって集めるか、温床をどこに作るか、また温床の毎日の管理はどうするか、、都会から田舎にJターンしてきた私にとってもハードルが高いことばかりです。
しかし仕込んだ温床の温度が上がったときの喜びや朝晩寒い中でも夏野菜が育苗できる安心感をぜひ皆様に味わってほしいと思います。
自然の循環の中で育った健康な野菜を家族と食べる満足感は格別です!
最後までお読みいただきありがとうございました。
ではまた次の記事でお会いしましょう!